ピーター・ガブリエル:レッド・レイン(Red Rain)
もう20年が経つ。ちょうど20年前の1987年6月27日、ワシはロンドンにいた。そして向かった先はアールズ・コート。ピーター・ガブリエルの“So”ツアーだ。
ワシの大好きなガブリエルⅣ「Security」。それから4年後に「So」は発表された。「So」は、どうしようもない居心地の悪さを感じさせるものだった。ガブリエルの病的神経症的なところを好んでいたワシは、「So」のわかりやすさに戸惑っていた。もちろん「So」のアルバムが悪いわけではない。一つ一つの曲が悪いわけではない。しかし居心地の悪さは否定できなかった。その中で救われた曲が「レッド・レイン」だ。
ガブリエルの言う「赤い雨」とは血のこと。それが身体にまとわりついて離れない。人間が本来持っている抑制された感情のことを歌った情念のバラードが、この「レッド・レイン」だ。
『ピーター・ガブリエル正伝』で、ガブリエルはこの曲についてこう語る。
何年も前、いまだに忘れられない夢を見たんだ。ぼくは赤と黒のうねるような海を泳いでいて、急に海がものすごい勢いで荒れだした。すると海は二つの白い壁に分かれたんだ。一つの壁からもう一つの壁へと瓶か、はたまた人間の格好をしたものが数珠つなぎになって、赤い水を運び、やがてそれは落ちてもう一つの壁の底で粉々にくだけ散るんだ。ぼくはこれをあるストーリーの中のワン・シーンに使ったんだけど、赤い海と赤い雨は否定された感情や思考を表わしているんだ……
感情や苦しさは表に出してやらないと、どんどん悪くなったりふくれあがったりするだけじゃなくて、外の世界にひとりでに出たりするんだと思う、人生では人との関係においてとか。たとえば、この場合には心の嵐を表に出さないと、どしゃ降りの雨になって現われてくるんだ。
早めに着いたワシは、会場をぶらぶらと歩いていた。1階にはWOMADの展示があり、音楽が流れていた。そして、前座のユッスー・ンドゥールのステージが終わると、いよいよ御大の登場。すごい人気だ。
1曲目は「サン・ジャシント」。ワシの大好きな曲なので、いきなり興奮してしまった。その興奮さめやらぬ間に始まった2曲目が「レッド・レイン」だった。ブラジルのあるリズムを元にしたというこの曲は、デヴィッド・ローズのがちがちなギターとトニー・レヴィンのぶっといベースに乗っていく。
赤い雨が降ってくる
真っ赤な雨
赤い雨がどしゃ降りになって
僕の体中に降り注ぐ
赤い雨
重圧はますます重くのしかかる
そのたびに元の場所に立ち返るには
赤い雨に打たれることだ
その肌に赤い雨を受けることだ
君のもとへ行くよ――防御を解いて
幼子のように信じきっておくれ
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