月の光に(Au Clair de la Lune)
家に安っぽい置き時計がありました。それはプラスチック製で、ちょっといかめしい文字盤のもので、全く絵にならないものです。そのプラスチックの外見もちょっと欠けていたりします。
その時計が奏でていたのが、「月の光に(Au Clair de la Lune)」という曲でした。オルゴールの音色が目覚ましがわりに響きます。病気がちな私は、うとうとしながらこの曲をよく聞いていたものです。こんな曲です。
社会人になってから、突然この曲が恋しくなり、なんて曲だったんだろうと思うようになりました。しかし、音色は憶えていても、曲名など検討もつきません。
そんな社会人のある日、NHKで自動人形の番組があり、録画して見ていたのですが、最後に出てきたのが、オルゴール人形「ピエロ・エクリヴァン(Pierrot ecrivain)」でした。そして、そこから流れる曲……これがあの曲でした!
私は「やった!」と思いましたが、でも曲名がわかりません。
そのころ、高尾にあった小さなトラッドレコード専門店で、当時はだれも注目していなかったトラッドを漁っていたのですが、そこにあったのです。フランスのトラッドの歌手が歌っていました。そして、曲名がわかったのです。
♪月の光のもとで
お友だちのピエロさん
ペンを貸してちょうだいな
ひとこと書きたいんだ
こうなると、今度はそのオルゴールが欲しくなります。しかし、子供のときの置き時計は壊れて捨てられ、今はありません。
ちょうどヨーロッパに行くことにしていたので、フランスに行ったとき、たどたどしいフランス語で聞いてみました。
「『月の光に』のオルゴール……ありますか?」
「ノン!」
あっさりと言われてしまいました。しかし、語学力のない私はその理由を聞くことができません(大学時代もっと真面目にフランス語をやっておけばよかったのでした)。
それから十数年が過ぎ、オルゴール・コンサートというのがあることを知って、そこに出かけました。そこで「ピエロ・エクリヴァン」に出会ったのです。あのNHKの番組で出てきたオルゴール人形です。
その人形は『月の光に』の歌をモチーフにして動きます。月の光で物書きをしていたピエロさんは、うとうとと眠くなってしまいます。すると明かりが消えてしまって、「こりゃいかん」と明かりをつけるのですが、また眠くなってしまって……
オルゴール・コンサートは、オルゴールの音色が本当に素晴らしく、心を癒すぜいたくな楽しみを満喫できました。でもやはり、私の関心は「ピエロ・エクリヴァン」から離れません。「月の光に」の曲に魅せられてしまっています。
そして、小さなオルゴールでもいいから「月の光に」はないのか、店員の人に聞いてみると、今はその曲は作っていないとのことでした。かなり前から作っていないようです。ここで、フランスでの「ノン!」の意味がわかりました。
その後調べてみると、この「月の光に」は、ピアノの練習曲でもあったようです。メトードローズの教本は、かわいい挿絵つきです。……ピエロでしょうか? 「月の光に」の歌詞と訳詞は、こちらで。
思い出は時の波に洗われて、帰ってくることはありません。思い出のオルゴールは、頭の片隅に……
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